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 〈 第一章 旅立ちと青い目の男〉-8
  


いつの間にか日が落ちていこうとしていた。港町の黄昏時には、ある種の哀愁が漂うものである。しろい家の壁に、夕日の赤い色がうつりこんで、どこかもの悲しい印象をたたえる。
 ガッと相手をたたき伏せ、目の前の相手が倒れた隙をみて逆十字は、その真横を駆け抜ける。
「ったく、なんだよ。今頃になって飛び掛ってきやがって!」
 片手に拳銃を握ったまま、逆十字は街の中を走り回っていた。
 あの背の小さい少年と、かわいらしいが何となく危なっかしい小娘の二人組。あれを追いかけて、はやくアレを出させないといけないが、一体あの二人はどこにいったのやら。
 とりあえず、あたりを探し回っているが、元々人通りの少ない港町だ。おまけに、サーペントの手下があちこちにいるので、通行人がのこのこ歩いているはずもなく、皆警戒して家の中で閉じこもっていることが多い。
 彼とて、自分の風体はよくわかっているので、そんな家に気軽に入っていくことはない。さすがに今の状況でドアを叩いたりしたら、サーペント一味と間違われるにきまっている。
 息を切らして港町を駆けずり回っていた逆十字は、ふと、目の前の酒場を見やった。そういえば、この酒場のことを忘れていた。あの二人、ここのダンナといやに親しげだったようだ。
「……いってみるか」
 ただし、酒場などというところは、荒くれ者が集まりやすいところだ。サーペントの手下とぶつかる可能性は捨てきれない。だが、危険を考えている場合でもない。
 彼は用心しながら、酒場に近づいた。


「なんだ、ガキどもをしらないっていうのか!」
「申し訳ないが、そんな二人はこの町には存在していないのですよ」
 サトラッタが、表向き従順そうな声でそう説明している。
「……よその街の子が紛れ込んでいたのではないでしょうか」
 ダーテアスは、サトラッタの猫のかぶり具合におびえつつ、状況を見守っていた。酒場の中には、海賊が五人。すでに剣を抜いているやつもいれば、手の拳銃の撃鉄が起きているやつもいる。
「でも、この酒場に奴らが逃げ込むのをみたっていうのがいたぞ! てめえ、あの二人がどこいったか知ってるんだろう!」
「はて、そうだったかな……。最近物覚えが悪くなりまして、記憶が少々……」
 などとすっとぼけるサトラッタの様子を見て、海賊の一人がダーテアスをにらんだ。
「それじゃあ、てめえが知ってるよなあ!」
「い、いや、俺は、その、このジジイの世話をみていたので、いつ入ってきたのかぜんぜん覚えてなくて……」
 慌てて言い訳をするダーテアスだが、これはちょっと苦しい。きっと顔色を変えて、声を荒げる海賊達の反応を見ながら、彼はサトラッタに救いをもとめた。
 だが、サトラッタは冷淡なもので、とりあえずぼけたふりをしとおすつもりらしい。
「てめえ! わかってんだろうな!」
「……そりゃあその……」
 この状況、果たして背中に潜ませてある猟銃で片がつくだろうか。せめて弾でも用意して置けばよかった。
「いや、何というか、あの二人は……」
 ダーテアスがそういいかけたとき、きぃ、と扉が軋む音と共に、室内に光が漏れてきた。海賊達が振り返った直後、目の前に閃光が走った。
 続いて破裂音が鳴り響き、彼らの一人の帽子に穴があいて飛び散る。それを貫通したらしい弾が、後ろにある酒瓶にあたり、中のアルコールもろとも弾けとんだ。
「な、なんだ!」
「ったく、結局酒の匂いのするところには、お互い弱いってか?」
 銃をにぎったまま、入ってきた男がそういった。思わず、びくりとしている海賊たちを無視して、逆十字はにやりとする。
「あっと、マスター悪い。コレは器物損壊になるのか?」
「まぁ、罪状としては」
 それに答えたのは、ダーテアスでなくサトラッタであったが、逆十字はちょっとだけ苦笑した。
「そいつは悪かった。でも、この場をどうにかするんで、それはそれで勘弁してやってくれよ」
「て、てめえッ! 何時の間に!」
「反応が遅い」
 すっかり気を取られているらしい男の足元をすくい、逆十字は軽く笑った。その背を軽く踏んで、男の反抗を封じると彼は手の拳銃を軽く回した。 
「何時の間にもどうもこうも」
 逆十字は片手で髪の毛をなでやりながら、あきれたようにいった。
「お前らがぼさっとして前しか見てねえのが悪いんだよ」
 男達が、慌てた様子で銃を抜こうとするが、逆十字は知らん顔だ。その平然さが不審で、男達は銃を抜けない。
「しかし」
 不意に何をおもったか、ぽつりという彼は、妙に余裕である。先に彼が銃を抜いてはいるが、別にこの状況、彼だけに有利なわけでもない。一応人質めいたものもいることだし、そんなに余裕で構えられるほどの状況でもないのだが。
「酒場で刃傷沙汰はよくあるとはいえ、さすがに流血までいっちゃあ迷惑がかかるよなあ」
「あ、ちょっと、ソレはやめてくれよ!」
「大丈夫だよ、やらねえって」
 慌てるダーテアスを気の毒に思ったのか、彼は苦笑いして返事をした。そして、目を再び返す。
「一応、こういうところで殺しはしねえことにしてるんだよ。やるなら、目につかねえところじゃねえとまずいよなあ」
「な、何言ってんだ。お前、俺達は五人で……」
 そう状況を確認して、どうにか、自分達の優位を確認しようとしてみる。そうすれば、当たり前のようにここで逆十字に銃を向けてしまえばいいのだ。相手が相当な早撃ちでも、五人全てを一瞬でしとめることは無理だ。だが、それをきいても、彼の顔色は一つも変わっていない。
「おいおい、本当に気付いてなかったのか? ……オレは入る前、ここをのぞいて、手助けするのをやめようかと思ったぐらいなのに」
「なんだ、どういうことだ?」
 逆十字は、彼らから目を離さず、手をさっとサトラッタ方に示した。
「よく見てみろ。その爺さん、左手はグラス握ってるけど、右手はどこにあるんだよ」
 ぎょっとして、彼らが急に今まで脅していた相手に目を向ける。しかし、そのときには、すでにサトラッタは今まで背後にさりげなく隠していた右手を出してきていた。その手の先には二連発の短銃が握られていた。
「お前、後一言余計なこと言ってたら頭吹っ飛ばされてたぜ」
 おもしろそうにいいやる逆十字の言葉に、多少考えることがあったのか、男達は何となくざわつきはじめた。
「さて、そこのおっちゃんも、後ろに一応猟銃みたいなのを持ってるみたいだし、お前達、三対五で、おまけに二人に銃を抜かれてるわけだ。どうする?」
 元から低い声の逆十字は、さらにひときわ声を低めた。
「今のうちに出て行ったほうが身のためじゃねえか?」
「く……」
 唸った男達は、そろりと足を動かした。
「さあ」
 迫るように逆十字がそう言ったとき、彼らは突然走り始めた。そのまま出口に駆け出していく彼らの様子を油断なく見るが、どうもはむかうつもりはないらしい。そのまま、扉の外に散っていく彼らは、今は引き上げる気らしかった。
「待ってくれ!」
 彼に踏まれたままの男が悲鳴をあげたが、待ってくれるものはいない。
「弱い絆だな。ほら、お前も追いかけろ」
 或いは本気で同情したのかもしれない。少々気の毒そうな顔になった逆十字は、足をはずして、わき腹を軽く蹴りやった。男は弾かれたようにたちあがり、そのまま駆け出していく。
 慌てて去っていく男達をみやりながら、フォーダートは呟いた。
「少なくとも、置いてかれたやつはその後人間不信になるな」
 かわいそうに、といわんばかりの口調の彼に、後ろから見ていたサトラッタはにやりとした。
「なかなかやるではないか。お若いの」
「オレは寧ろ、いつのまにか武器をかくしもってて平然としてるアンタの方が恐いね」
 彼は振り返ると、軽く方をすくめた。
「……オレはあんたみたいな爺さんには、逆らわないようにしてるんだよ。逆らうとろくなことにならねえからな」
 くわばらくわばら、とでも言いたげに、逆十字はため息混じりにそういう。なにか、年長者に気まずい思い出でもあるのだろうか。
「と、そうそう、本当にあんたたち、あの二人がどこいったか知らないのか?」
「お前さんがどういう目的であの二人を追っているかによるな」
 サトラッタは、真意をさぐるように逆十字の顔を見やる。
「目的、っていっても、はっきりとはいえないんだが、どちらにしろ、あの二人を放っておくとマズイんだよ」
「目的をいえないというなら、信用に足らんが……」
「それはそうだな」
 逆十字は思ったよりあっさりと引き下がる。
「それじゃあ、この町の境を越えないうちは、あの二人の敵に回ることはしねえ。そういうことならどうだ?」
 逆十字は、少々慌てた様子で続けた。
「そうじゃなければ、この町の境を越えない内にあの二人がどうなってるか、オレは保障できないぜ」
「……それに嘘はないだろうな?」
「爺さん、ここまで言ってるんだし、疑うような……」
 逆十字の印象がそう悪いものでもないせいか、ダーテアスが、口を挟んできた。
「オレは、一応約束は守るぜ。……ああ、それじゃあわかった。オレの名前を言えばいいだろう。もし、あの二人に何かあったら、名前とオレの風体で訴えでもなんでもしてくれよ」
 ふむ、とサトラッタは顎をなでやる。目の前の男は、思いのほか綺麗な目をしていた。悪党でも、目の澄んでいるものはいる。だから、それだけを最高の判断材料にするのは少々危ない。だが。
「名前は?」
「フォーダートだ」
「わかった」
 サトラッタは、頬杖をつきながらため息をつく。
「この裏口から外に出て、まっすぐいったところに丘がある。そこに赤い屋根の家があるのだが、連中はそこにある自家用機で空から逃げるつもりだ」
「自家用機! そ、その時点で大丈夫なのか?」
 フォーダートという名前を名乗った逆十字の男は、驚いたように呟いた。もちろん、彼の不安は、あの少年少女の操縦技術がどうか、という心配である。
「まあ、どうにかなるだろうて」
「どうにかなるって……。やっぱり、爺さん、あんた、色んな意味で曲者だな」
 やや苦笑気味にそういって、逆十字は、じゃあと裏口に手をかけた。
「それじゃあ、失礼するぜ」
 そういうと、彼は、あわただしく外に出て行った。その様子をみやりながら、サトラッタは再び酒を飲み始める。
「なあなあ。……行っちゃったけど大丈夫なのか、アレ」
 ダーテアスが不安げにはなしかけてきた。
「信用してやれ、とわたしにいったのは、貴様ではなかったか?」
「そりゃあそうだけど。でも、よく考えると、やっぱり、カタギじゃないわけだしさ」
 簡単に信用してもいいものか。行ってしまった後で、ダーテアスは不安になったのだ。
「確かに。あの男が味方かどうかはわからない。正直、敵になる可能性もないではない」
「んじゃ、アブナイだろ! どうするんだよ!」
「だが、あの男は、町の境界を越えないうちは手を出さないといっていただろう。なら、この町の境を越えるまでは手を出してはこないはずだ」
 サトラッタは、ダーテアスを横目に見た。
「本人が言うとおり、あの風体は目立つ。まあ、足が着くときは着くだろうし」
 それに、と彼は付け足す。
「私が見ても、どうも嘘をついているようには見えなかったからな」
「ええ、だまされてるんじゃないのか?」
 お前に言われたくない。そんな目でちらりとにらまれて、ダーテアスはびくりと身を引く。サトラッタは、それをどうでもよさげにみやったあとぽつりとつぶやいた。
「ともあれ、この場はどうにかしのげるだろう」
 彼はそういうと、どこかがらんとした店内を見て、目を細めた。
 

 何を言われても、自信がないものはないのである。冒険心にあふれているのと、無謀なのは、実はちょっと違うものなのだ。
 普段は無謀なくせに、いざという段になるとちょっと考えてしまうあたりは、実に都合がいいのであるが。
 ともあれ、アルザスは先ほどからどうも景気の悪い顔のままで走っているのである。
「あのねえ、何しょげてるのよ」
「お前の元気さがおかしいんだ」
 アルザスはため息をつく。
「覚悟決めなさいよ。男でしょ」
「そういう言い方は差別だぞ。というか、そういう問題じゃなくな……」
 アルザスは、もう一度深くため息をついた。
「どうなっても責任とらねえぞ」
「何いってるの? あんたみたいな無資力な人にそんなの求めないわよ」
「それはそれで腹が立つ」
 きっぱりとライーザに言われて、アルザスは眉をひそめた。今の言い方はちょっとひどくないだろうか。
「でもなあ。アレは、正直飛ぶかどうかも怪しいぞ」
「この前、あんたんところのお父さんが、アレは飛ぶって断言してたわよ」
「信用ならん!」
 アルザスは青くなった。ディアスはアルザスから見てもいい加減な男なのである。山師という言葉が妙に似合う父のことを、尊敬していないわけではないのだが、さすがに無条件に信用するとなると困る。
 一体、ライーザはどうしてあんなオヤジのことを信用する気になったのだろう。これが、度胸の差というやつなのだろうか。
「まあいいじゃない。エンジンかからなかったら、次の作戦を考えましょう?」
「お前さあ、いつからそういう性格してたんだよ」
 アルザスは、あきれたように言った。
「お前は頭のいい奴だって思ってきたのに!」
「あのねえ。何事も行動あるのみじゃない。まったく、煮え切らない男ね!」
 ライーザがちらりとあきれたような視線を投げてくる。そういわれると、アルザスも少々腹がたってきた。いつもあきれられたりしているが、面と向かって意気地なし扱いされるのはさすがに我慢がならないのだ。
「わかった! その代わり責任はホントとらねえからな!」
「だから元々責任取らせるつもりもないっていってるじゃない」
 妙な意地の張り合いみたいになってきた。とにかく、アルザスも引くに引けない理由ができてしまったので、やけ気味に走り始める。
 ともあれ、目的地はもうすぐだった。その時、いきなり声が響いた。
「お前達どこに行くんだ!」
 最初は、敵か何かかとおもったが、そうでもないらしい。その声は聞き覚えがある。
「あれ、ディックじゃない。どうしたの?」
 ライーザが立ち止まり、アルザスも続いて止まる。そこには、彼らより少々年上の青年が立っている。
「なんだ、何してんだよ?」
「お前達こそ何してるんだよ?」
 ディックは怪訝そうな顔をした。ディックは、若者の少ない街では、ある意味、子供達の世話役でもある。昔はアルザスと喧嘩もしたことのある仲だが、一足先にお兄さんになってしまったディックは、すっかり落ち着いた風貌になっていた。
「オレは、隣町に買い物にでかけてその帰りだ。で、なんだ、お前達。なんか、すすけてるし、街の方もちょっと異様だし。何があったんだ?」
 お前達がなにかやったんじゃないだろうな。さすがにそうは聞かないが、そうきかれているような気がして、アルザスはむっとした。
「別にオレたちが原因じゃねえよ。強いて言うなら、オレじゃなく……」
「あのね、今、あたし達、追われてるの」
 アルザスの口をさえぎるようにライーザが割り込んできた。
「海賊みたいなのが街に入り込んでいるのよ。そいつらに追われちゃって」
「ええ! それは本当か!」
 アルザスの言うことはともかく、ライーザは信用がある。ディアスは顔色を変えた。
「で、でも、大丈夫なのか? 色々と」
「サトラッタがどうにかしてくれるっていっていたわ。確かに、あの人に任せておけば大体は大丈夫だと思うの」
「ソレはいえるな」
 ディックもそれにはうなずく。かつて悪戯小僧だった彼も、サトラッタの恐ろしさは何となくわかっている。
「ああ、でも、ソレはともかくお前達大丈夫なのかよ? 武器もないみたいだし」
 ディックは、思い出したように、抱えていたカバンをあさりだした。
「あ、よかったらこれもっていけ!」
「え、なんだよ。お前だって、そんな武器使えないじゃねえか」
 アルザスが、そういうとディックは首を振った。
「武器じゃなくても、なんか役立つものはあるだろ。全く、相変わらず考えが浅いな」
「なんだと!」
「ちょっと、うるさいわよ、アルザス」
 いきりたつアルザスをぴしゃりと押さえ込むと、ライーザはディックの方をみやる。
「ほら。今日買い物を頼まれたのに入ってたんだ。困ったらこれ使え!」
 そういってディックが差し出したのは、紙袋に入った何かだ。ライーザがそれを受け取って中を覗き込む。文句をいいつつも、興味があるらしく、アルザスは後ろからそれを覗いていた。ライーザは紙袋から中身を取り出す。
 それは、どうやら船舶用の信号弾のようだった。
「これでどうしろって」
「こけおどしにはなるかもしれないし、それに大体、助けを呼ぶには必須だろ」
「それはそうだけど」 
 アルザスはもうちょっと箔のある道具を期待していたので、ちょっとだけつまらなさそうになった。そもそも、こういうところで箔のある道具を期待するほうが間違ってはいるのだが。
「ありがとう。何かの役にたつとおもうわ!」
 ライーザは、使える道具が増えたので、ほっとした様子で答えた。
「ああ。気をつけろよ! オレもしばらくついていてやりたいんだが、町のほうも気になって……」
「大丈夫だよ。お前なんかいてもいなくても一緒だし」
「まあ、お前がそういう態度取っている間は大丈夫だと思ってな。こっちは」
 アルザスがわざと強い口調でいいやると、そういう言葉が返ってきた。ぐっと詰まるアルザスをおいておいて、ライーザはこたえる。
「大丈夫よ。あたし達は。それより、街に行ってあげて!」
「ああ。気をつけろよ!」
「あなたもね!」
 ディックはライーザに手を振ると、そのまま振り返らずに走っていく。アルザスは、ちぇっと軽く舌打ちした。
「相変わらず、むかつく野郎だな!」
「そういってるのはあんただけよ。まったく、ホント、あんたとディックって妙に相性悪いわよね」
 前世にでも因縁があるんじゃないの? と冷たくいって、ライーザは、アルザスの肩を叩いた。
「そういえば、聞き忘れてたんだけど、格納庫の鍵ってどうなってるの?」
 いきなりそんなことを聞かれて、アルザスはきょとんとした。
「かぎ?」
「そうよ。多分あんたのとこのお母さんが持ってたと思うんだけど」
「あ、ああ」
 一瞬、どこにあるかわからず、これはまずいことになった、といった顔をしたアルザスだが、そういわれてどうにか思い出すことが出来た。そういえば、そんなものもあったっけ。確か、あれは、家の乗り物やらなにやらの鍵が一つにまとめられている鍵置き場にひっかけてあったはずである。ライーザににらまれずにすみそうなのでなのか、ちょっとだけほっとした。 
「あ? ああ、アレは家においてあるけど。先に家よってとってくればいいんだろ。どうせすぐ近くにあるんだし」
「そうね。じゃあ、先に家によっていきましょう!」
 そういって、彼らは再び進むことにした。丘の短い草を蹴って走りながら、宵闇の空に、アルザスの家のどこか古びた色がうつる。

 
注:改稿の最新ページです。9とは若干繋がらない部分がありますので、ご注意ください。


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